アージリスの未成熟・成熟理論とは

アージリスの未成熟・成熟理論の意味

未成熟・成熟理論とはアージリス(Argyris)によって提唱された「人間は誰でも成長への欲求を持っている」とした理論です。この理論では一般的な経営課題である従業員のモチベーション問題についても言及し「伝統的な企業、組織の仕組みは人間の成長欲求を阻害する働きがある」という指摘も行いました。

人間は成長を求めている

どんな人でも赤ちゃんの頃は両親に依存して生活します。しかし、時間が経つにつれて自分の手で食事をし、自分で着替えるなどして一人で出来る行動を増やしていきます。これは両親に強制されたからという訳ではなく、本能的に成長したいという欲求を持っているからです。アージリスはこの成長を未成熟な人格から成熟した人格への変化であると定義して、以下の七つの変化があると述べています。

受動的行動 → 能動的行動
依存的 → 自立・独立的
単純な行動 → 多様な行動
浅い関心 → 深い関心
短期的展望 → 長期的展望
従属的地位 → 同等・優越的地位
自意識の欠如 → 自意識・自己統制(自意識が高くなり、自分自身をコントロール出来るようになる)

アージリスは左の未成熟な状態から右の成熟した状態へ変化することは人間が自然に持つ欲求であるとしました。右の成熟した状態は一般的に企業が従業員に望む人格であることが分かります。本来であれば欲求に従って従業員は成熟した人格に成長するはずですが、現実的には未成熟な人格に留まる従業員がいて、その存在は企業経営における大きな課題となっています。では、なぜ成長しない従業員がいるのか、アージリスはその理由を経営管理の弊害であると述べています。

成長を阻害する組織

効率化のため、仕事を細分化し、仕事の手順を作り、上司が厳格に従業員を管理する。こういった管理が従業員を未成熟な人格に留めてしまうのです。言われたことを言われたとおりにする、そんな環境では従業員の成長欲求は満たされず、モチベーションが低下してしまいます。この状況に対してアージリスは従業員の成長を促しモチベーションを高める二つの対策を提示しました。

①職務拡大:仕事の種類、内容に変化をもたせる
②参加型リーダーシップ:上司の一方的な指揮ではなく、従業員にも決定権を与える

アージリスは成熟した従業員は企業に大きな利益をもたらすとして、従業員の職務拡大や参加型リーダーシップを促すことで積極的に組織を改善し、従業員の成長に投資するのは有益だと述べています。
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