ピグマリオン効果の意味
ピグマリオン効果とは人間は他者から「期待」されると実際に期待通りの成果をあげる現象のことです。この現象が初めて確認されたのは1968年に教育心理学者ローゼンタール(Rosenthal)の実験からです。実験は教師を騙すことから始まりました。「子供の成績の伸びが分かるテストが開発された」と嘘をつき、「テストの結果、今後成績が向上する生徒である」とランダムに選んだ生徒のリストを教師に渡しました。教師はランダムなリストに載っている生徒に対して特別な指導をした訳ではありませんでしたが、教師はリストの内容を信じ、生徒に対して期待しました。数カ月後にリストに載った生徒達の成績とリスト外の生徒達の成績を比較すると、リストに載った生徒の成績がリスト外の生徒に比べて向上している傾向が確認されました。この実験からリストの生徒の成績向上の理由は教師の期待であったとローゼンタールは考え、ピグマリオン効果と呼びました。
ピグマリオン効果のマネジメントへの応用
ローゼンタールは教育分野においてピグマリオン効果を確認しましたが、経営の現場でもマネジメントへの応用が期待され、多くの検証実験が行われました。その中でもピグマリオン効果の新しい側面を見出した二つの事例を紹介します。
①過去の評価ではなく、ポテンシャルを見て期待することも重要
各支社にバラバラに配属されていた優秀な販売員を集めたエリートチームと平均的な販売員を集めた非エリートチームを複数結成し、販売成績の変化を比較調査しました。結果、エリートチームは予想された成績を上回る期待以上の成績を達成し、非エリートチームのほとんどは予想通りか目標以下の成績になりました。この実験の興味深い点は、非エリートチームの中にも好成績を残したチームがあったことです。原因を探るため、好成績の非エリートチームを担当したマネージャーへの聞き取り調査を行った結果、担当マネージャーは仕事を通して「非エリートであるとされた販売員達は単純に経験が不足しているだけで、エリートチームの販売員を超えるポテンシャルを持っている」と思っていたことが分かりました。この事例は多くのマネージャーが過去の成績や評価通りの期待をしてしまう点、正しい評価や期待を持つことの重要性を明らかにしました。
②期待を部下に伝えることが重要
上司に部下への期待度に関するアンケートを行い、期待度の高い部下は実際に成績が上がるのかを調査しました。多くの場合、上司の期待度が高ければ部下の成績は向上していましたが、期待と成績に相関がない上司もいることが分かりました。相関のない上司の傾向を調べると冷静で感情を表に出さず、事務的に仕事に取り組むタイプの上司でした。このような上司に期待されていた部下に聞き取り調査を行うと、自分が期待されていたことに気づいていなかったことが明らかになりました。この結果から、ピグマリオン効果は上司が単純に期待するだけではなく、部下が期待されていると感じて初めて効果が発揮されるということが分かりました。
あとがき
ピグマリオン効果はその効果を疑う批判者が多いことも事実です。ローゼンタールの実験は再実験に失敗していますし、会社での実証実験の例で言えば、そもそも能力の高い人が期待され、その結果成果を上げているだけではないかという考え方もできます。しかし、人間は期待されることで「他者に認められたい」という欲求が満たされ、モチベーションが向上することは実証されているので、マネジメントにおける手段の一つとして覚えておきましょう。
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