N1分析とは (実践 顧客起点マーケティングのレビュー)

N1分析の意味

N1分析とは1人の顧客を徹底的に分析して新たな商品やサービスのアイデアを探るマーケティング手法です。P&Gのマーケティングディレクターを歴任し、その後はスマートニュースアプリに参画して成功に導いた現在の日本を代表するマーケター西口一希さんが著書「実践 顧客起点マーケティング」で詳しい内容を述べています。今回の記事ではN1分析の説明を行いながら、「実践 顧客起点マーケティング」のレビューを記載します。

N1分析の重要性

なぜ、定量的な統計分析など複数の顧客からアイデアを考えるのではなく、たった1人の顧客からアイデアを考えるのか、西口さんは「誰かにクリスマスプレゼントを選ぶ時、一番喜んでもらえるのはどれか?」という例をあげてその理由を説明しています。

①自分の家族や恋人のいずれか1人
②自分の同僚や同級生20人
③大学を卒業し、東京都在住の世帯年収800万円以上ある専業主婦1,000人

この場合、明らかに①のケースが相手を最も深く理解していて、相手に喜ばれるプレゼントを渡せる確立が高いことが分かります。逆に③のようなケースでは誰も強く否定しないが、誰も強く支持しないプレゼントになり、マーケティングに置き換えると、モノが溢れる現在でこのような誰にも刺さらない商品やサービスを導入してもヒット商品になることが難しいのは明らかです。よって、まず1人の顧客を徹底的に分析して具体的なアイデアを導き、そのアイデアが市場でどの程度の規模で受け入れられるかはテストマーケティングなどして後から確かめれば良いとしています。実際、N1分析を行うとアイデアは複数出てくるので、この絞り込み作業をする意味でもテストマーケティングは効果的です。

N1分析の進め方

顧客ピラミッド(5セグマップ)の作成

N1分析が重要と言っても適当に誰か一人を選んで話を聞けば良いわけではありません。まず顧客を属性別にグループ分けし、注力したい属性の中から一人選んでN1分析を行えば効率的です。西口さんは以下のように顧客をグループ分けする際に認知状況や購買状況で5つのセグメントに分類する5セグマップを勧めています。(著書の中では、よりグループ分けを細分化した9セグマップも説明ありますが、そちらは本書でお読みいただければ幸いです)
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5セグマップの説明.
この図のように分類することで、現在の顧客のみならず、離反顧客や認知はしているものの一度も買ったことがない顧客、そもそも認知すらしていない潜在顧客までグループ分けすることができます。しかも、究極的にはたった三つの問いからなる簡単な調査で作成できます。

問1:その商品やサービスを知っているか
問2:これまでに購入したことがあるか
問3:どのくらいの頻度で購入しているか

これにより、簡単に商品やサービスの認知状況や購買状況を把握することができます。
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5セグマップの値入力後の説明.

セグメント分析

先ほど、5セグマップはたった三つの調査で作成可能と記載しましたが、実際はそれぞれのセグメントのギャップがなぜ生じているかを把握するために、「その商品やサービスをどのように認識しているか」や「どのような機能イメージがあるか」など、顧客の心理データも重ねて調査する必要があります。これにより、もし自分が離反顧客を食い止めたいのであれば、離反顧客とロイヤル顧客の心理データを比較し、それぞれのギャップから大まかな課題を抽出し、だいたいの仮説を立てることができます。とは言え、簡単な心理データだけでは、顧客の表面的な心理状況しか把握できないので、実際に一人の顧客に向き合ってN1分析を行い、仮説に磨きをかける必要があります。

N1分析

N1分析で最も明らかにしたいことは、いつ、どのようなきっかけでその商品やサービスを知って、購入に至ったか、またはロイヤル顧客となったかです。例えば、ある商品の新機能について検討している時、5セグメントをどのように改善したいかによりますが、基本的にはロイヤル顧客がその商品やサービスに深く思いれがあるので、ロイヤル顧客をN1分析することで新たなアイデアが浮かびやすいと西口さんは述べています。また、その際10人のロイヤル顧客についてN1分析を行うのであれば、10人の平均的な意見を求めるのではなく、あくまでN1(個人)×10人と認識した上で、分析する必要があるとも述べています。

アイデアの創出と検証

例えば新機能について検討する際、西口さんのスマートニュースの場合では、以下のようなN1分析の結果が得られ、アイデア創出に活用しています。

・ロイヤル顧客の多くがスマートニュースが誕生した時期から使っており、使い勝手と充実したコンテンツを評価している。(ほとんどは競合の後発アプリの使用経験は無い)
・ロイヤル顧客と一般顧客の差は車関連チャンネルなどの自分に合う特定のチャンネルがあるかの違い
・スマートニュースの一般顧客であり、競合アプリのロイヤル顧客は、使い勝手は両アプリを評価しているが、特に競合アプリのエンタメなど自分に合う特定コンテンツを楽しんでいる
・スマートニュース未使用客もアプリを実際インストールすると高評価が得られ、自分に合う特定チャンネルがあれば、更に評価が高い

このことから、導入時は使い勝手やコンテンツを評価されていたが、後発アプリの登場でコモディティ化している。しかし、特定チャンネルを改善し、認知させることができれば、更なる新規顧客とロイヤル顧客を獲得できると仮説を立てることができます。この仮説をもとに「英語ニュースチャンネル」や「動物チャンネル」など、複数の特定チャンネルのアイデアを創出し、これらのアイデアを導入した際の評価を5セグメントの各セグメントで改めて調査することにより、N1分析で得た仮説が正しかを検証することができます。

あとがき

N1分析の重要性やざっくりとしたN1分析の分析方法について記載させていただきました。得られるアウトプットがかなり具体的なので、机上の空論で終わらず、本当に実務で使える実践的なマーケティング手法だと思います。N1分析に興味のある方は是非、「実践 顧客起点マーケティング」を読んでみて下さい。N1分析のためだけの一冊なので、概念や分析方法がかなり詳しく書いてあるのは当然として、西口さんが「肌ラボ(化粧水)」をマーケティングした際の実例や、ロキシタン時代の経験、スマートニュースでN1分析した際の一連の調査についても詳しく書かれています。読んでみて絶対後悔しないおすすめの一冊です。
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