範囲の経済性とは

範囲の経済性の意味

範囲の経済性はある企業が複数の事業を運用する場合、別々の企業が独立してそれらの事業を運用するよりもコストが安くなることを指します。範囲の経済性が働くパターンとしては大きく3点あります。

(1)同じ事業同士で共通コストを合理化できる場合

例えば、2012年に鉄鋼大手メーカーである新日本製鉄と住友金属工業は合併して新日鉄住金(現:日本製鉄)を発足しましたが、その際、年率1500億円のコスト削減を掲げました。これは、原料を大量に仕入れて変動費を安くしたり、生産工程などを一本化して設備投資や作業員の人件費を合理化し、固定費を安く抑えることでコスト削減を行うことができるからです。このため同業種でM&A(合併と買収)が行われることが多く、コスト力を身に付けているのです。

(2)異なる事業同士で共通コストを合理化できる場合

日本製鉄は鉄鋼以外にもグループで化学事業や建設事業も行っていますが、これら複数の事業を一社で運用することにより、共通コストを削減できます。例えば、同じビルにオフィスを構えることで土地代を安くしたり、人事や経理などの間接部門を一本化することで人件費を安く抑えることができます。

(3)副産物により合理化できる場合

日本製鉄グループが化学事業や建設事業を行い、コスト合理化を更に行える理由として、鉄鋼事業で得た副産物を他の事業に寄与させているからです。例えば、化学事業は鉄を生産する過程で得られる副産物(タールや酸化鉄など)を原料とした化学製品に特化しているため、原料を安く仕入れることができます。また、建設事業は自社の鉄工場を建設、運営するノウハウを他の建設に役立て、原料である鉄なども安く仕入れることができます。このように本業の鉄鋼事業で得た副産物を他の事業に役立て、コスト合理化を行うことができるのです。このため、多くの企業は多角化を行い、コスト力を身に付けているのです。


上記から分かるように、日本製鉄は商品の機能面で差別化することが難しく、コスト力が重要な鉄鋼市場において、範囲の経済性を上手く用いてコストを抑え、世界で戦っています。

規模の経済性と経験効果との違い

範囲の経済性と似ている言葉で「規模の経済性」と「経験効果」があります。それぞれごちゃごちゃに理解しないよう簡単に記載しておきます。規模の経済性は一定期間の生産量に着目し、製品を多く生産することで製品一つ当たりにかかる固定費を安くし、製品一つ当たりのコストを安く抑えることを指します。人件費や土地代などの固定費は生産量に関わらず一定なので、製品を10個作る場合も100個作る場合もかかる固定費は同じです。この場合、100個作った方が製品一つ当たりの負担する固定費が安くなるので、製品を多く生産することでコストを安く抑えることができます(詳細:規模の経済性)。経験効果は生産量ではなく累積生産量に着目し、累積生産量が多くなればなるほど、その製品一つ当たりのコストが安くなることを指します。何回も同じものを作れば慣れてスピードが上がり、失敗品も少なくなることは容易にイメージできると思います。このように経験によるコストダウンを指します(詳細:経験効果)。
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