プッシュ戦略とプル戦略の意味
企業のプロモーション活動において、中間業者への販売員の派遣など販売支援を重視することをプッシュ(Push)戦略、広告など消費者の需要喚起を重視することをプル(Pull)戦略と呼びます。
プル戦略:テレビCMに代表されるメディア広告、割引キャンペーンなど
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プッシュ(Push)戦略
一般的に上図のように、商品は生産者から中間業者を通して消費者に届けられます。中間業者には卸や販売代理店、小売店などがあります。プッシュ戦略では、生産者は中間業者に対して人材派遣やリベートなどの販売支援を行います。中間業者にとって、販売支援が受けられる商品は消費者へも売り込みやすく、同じような商品が市場にある場合、優先して取り扱ってもらえるからです。このように生産者側から中間業者、消費者に向かって商品を押し出していく様子から、この戦略をプッシュ戦略と呼びます。
プル(Pull)戦略
一方、プル戦略ではテレビCMや雑誌広告などあらゆる手段を通して、消費者に需要を喚起するようなアプローチを取ります。十分に需要が喚起されれば消費者は商品を求めて中間業者で商品を指名買いするようになります。更に、中間業者は消費者に需要があることが分かれば、生産者へ商品を発注します。このように消費者の方から生産者へ向かって商品を引き寄せる様子から、この戦略をプル戦略と呼びます。
プロモーション活動におけるプッシュ戦略とプル戦略の使い方
そもそもプロモーション活動は消費者に商品を知ってもらい、購入を後押しすることを目的として行われます。具体的なプロモーションツールは様々ありますが、以下のように大きく四つに分類されます。
・広報・宣伝(PR活動):プレスリリース、コーポレートコミュニケーションなど
・販売促進:サンプル配布、コンテスト、値引き、店頭POPなど
・人的販売:販売員による接客、営業など
実際、これらの手段から一つだけ使うということは無く、状況に応じた複数の組み合わせが必要です。プッシュ戦略とプル戦略を正しく使い分けることで、これらのプロモーションツールの組み合わせを効率よく検討することができます。
具体的なプッシュ戦略とプル戦略の使い分け方
一般的に、法人向けの商品である生産財はプッシュ戦略が適しており、一般消費者向けの商品である消費財はプル戦略が適していると言われています。その理由を以下の二つの視点で記載します。
・流通チャネル
商品・消費者の性質
例えば、町工場の設備購入者は生産設備や点検センサーなどの生産財を購入する際、生産設備の生産能力や耐久性などを正しく商品を理解して購入する必要があります。一方、スーパーに通う主婦は毎日の食材など消費財をあまり深く理解せずとも購入してくれます。そのため、法人向けの商品である生産財は商品の説明が詳しく出来る人的販売などのプッシュ戦略が適していると言えます。また、消費者が広告に反応しやすいタイプかどうかも重要です。今回の例で言えば、町工場の設備購入者は広告だけでは購入まで至らないタイプの消費者といえます。そのため、生産財は広告などのプル戦略は適さないことが分かります。
流通チャネル
流通チャネルは商品の入手性と言い換えることができます。一般的に消費財は流通チャネルが広く、入手性が高いです。一方、生産財は流通チャネルが狭く、特定のチャンネルからしか購入できないため、購入したい時に簡単に購入できず、入手性が低いです。プル戦略はテレビCMなど消費者の需要を喚起することを重視しますが、流通チャネルが狭く商品の入手性が低ければ、購買行動に繋がり難いため、生産財にはプル戦略は適していないと言えます。
価格
また、生産財や消費財の区分が関係無い例ですが、一般に商品の価格が高くなればなるほど消費者は購入に慎重になります。そのため、販売員による購入の後押しが重要なので高価格の商品はプッシュ戦略が適します。一方、低価格帯の商品は洗剤など一般的には大量に販売する商品であるため、一人一人にアプローチするプッシュ戦略よりは、広告など多くの消費者にアプローチできるプル戦略が適します。
あとがき
この記事では一般的に生産財はプッシュ戦略、消費財はプル戦略が適していていると記載しましたが、様々な要因によって戦略は変わります。例えば、近年マス広告の効果が弱まってきていること、またイオンに代表される大手小売店が強い力をつけていることなどから、消費財メーカーも中間業者へのアプローチを重視する必要が生まれてきています。プロモーション活動は手法が豊富で組み合わせの自由度が高いため、行き当たりばったりな計画ではすぐに破綻してしまいます。自社の状況を分析してプッシュ戦略とプル戦略を上手く使い分けて計画を立てることが重要なのです。
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